私の住んでいる町の旧街道沿いに、明治の建物をそのままに残す和菓子屋さんが御座います。ぐいっと湾曲した屋根瓦の一枚一枚は何とも風光明媚。気泡やゆらぎが見られる古いガラスの引き戸に手の先を沿え、ゆっくりと丁寧に引くと聞こえるガラガラという音に耳を澄ますと、まるでセピア色の映画の主人公になったやうで。暖簾をそっとくぐって中に入れば、地続きの土間のやうな作りと申しませうか、土臭く湯気が立つやうなこもった雰囲気。外の様子とは明らかに目に見えない何かが、がらりと変わります。わずかな光しか通さない翳りある店内に置かれた、古いガラスのショーケースには、季節の水菓子、角が際立つ水羊羹、葛きり、可愛らしい千代紙の貼られた折箱に詰められた最中、御煎餅などなど、カウンターの上に置かれた麩まんじゅうが美味しそうで。羊羹を幾つか包んでもらい。麩まんじゅうはお店の外に出たらすぐに食べてしまおうかしらんとかなんとか…
旧街道の向こう側からこの和風建築を眺めていると、時代劇に出てきそうな宿場のやうな、もしくは老舗の温泉街のやうにも見えてきます。この通りには帝国と名を付けた古い建物を持つ時計屋さんが御座いましたが、マンションの建設によりお店をたたまれてしまいました。もうあの狭い店内にたくさん飾られた”ぼんぼん時計”が見られないと思うと残念に想います。