先週、私の祖母が100歳で亡くなりました。自分の力で歩行する力がもうなかったり、目の焦点が合わなかったり、30分前の記憶が曖昧だったりと日常を遮ることが多々あり、本人も苦しく悔しそうでしたが、最後はベッドの上で静かに老衰を向え、伯父からは穏やかな顔をしていたと聞かされ安堵しました。
私の住んでいる街には大きなデパートがあって、七五三のお祝いの時に祖母から買ってもらったバービー人形は、紫色のお姫様ドレスを着ていました。祖母だけ前の晩から私たちが住む小さなマンションに泊まり、祖父はお祝いの当日、直接デパートの正面入り口に来てくれた記憶が御座います。祖父母は千葉の外房で農業を営んでおりましたので、自分たちの住んでいる村から外へ出ることはほとんどなく、いつも会うのはお盆とお正月の、おばあちゃんのお家と決まっていました。だから、鈍行で片道二時間の道のりを、祖父ひとりで来たことにとても驚いたし、私の為に、農作業で手の汚れた祖父が背広を着て現れたことに、何だか照れくさかったことを覚えています。
たしか、その日は、デパートの最上階の回転レストランでお子様ランチを食べました。私の七五三のお祝いという特別な日で、皆が綺麗に着飾っていたから嬉しくて、少女ながらに、いつもより知的に見えるやう、少し気どって、ゆっくりと小さな匙を口に運んだことを覚えています。あの頃は、何かあれば家族皆で正装してデパートのレストランでなんてよくある光景だったのかしらん。もう、バービーちゃんも回転レストランもなく、祖父も祖母も居ないけれども、切なくて愛おしい少女の記憶として、私の内側に残り続けることでせう。少女時代は、自分の身に起こることや、訪れる風景に立ち止まることなく、受けては流しての繰り返しでしたが、今の私がピンク色を好むのも、繊細でロマンチックなレースにうっとりするのも、何故か底抜けに明るいことよりも甘くノスタルジックな趣の方がご機嫌でいられるのも、全て、私の周りを何気なく通り過ぎて行ったものや人たちが、形作ってくれた結果なのでせうね。偶然のやうであり、それは必然で。
私の一歳になる息子のファーストキッスの相手はこの祖母でして、少しボケてしまっていた祖母に、可愛いと覆いかぶされ、キスされてしまいました。このデパートは今でも日常的に買い物に行く場所ですから、息子がもう少し大きくなったら、回転レストランで食べたお子様ランチの想い出を話してあげたいと思います。
優しかった”おばあちゃん”を想って。
