隣町のカフェで珈琲豆と手作りの焼き菓子を買って帰る。
外はレースの編み目のやふな細やかな雨。
長男と手を繋いで駅までの道のり。
グレイッシュな冬の空、その先の路地に入れば静謐。
カフェからの珈琲の香りが匂う。
これが漂いだすとほんとたまらない。
帰宅後に買ってきたカヌレを齧り挽きたての珈琲を膝を丸めながらすする。
息子を横目に本のお気に入りの一節を読むためにページをめくる。
“私にとって映画はチョコレートと似ています。綺麗な箱に入った、ちょっと贅沢なチョコレート。箱の中の一粒を宝物のようにそっと取り出し、舌の上でゆっくりととかしていく時のしあわせな気持ち……。大好きな映画を見た時も、そんな満ち足りた気分になります。”
私にとっても映画はもちろん、装丁の可愛い本。
堕ちていける言葉の数々がこぼれている本。
クラシカルな色味にあふれた本。
そんな本をめくるとこんな風に思える瞬間がある。
こんな風に思える瞬間はほんとに時々しかないから
忘れないやふ書きとめておこうと思ったまで。
“チョコレートな夜” 佐々木美穂
