ある日。真夏の炎天下。
根津の駅を降りて、言問通りをしばし進みます。途中、右に折れ、昭和の初期に建てられたであろう趣きある屋根瓦や扉を持つ民家や、東京らしいこぢんまりとした個人経営のレストランなどを横目に、くねくねと進みまして、東京藝術大学の並木道をまっすぐ歩きます。
しっとりとしたブラウンのレンガ造りの壁が、木々の翳を映す黒田記念館を左に曲がれば辿り着くのが”国際子ども図書館”です。
根津駅から距離にして15分歩くか歩かないか。息子と二人、汗びっしょりです。
国際子ども図書館は明治39年に”帝国図書館”として建設されました。その重々しい堂々たる佇まいはアンピール様式と呼ばれるもので、幾たびの増築や補修を繰り返し、2000年に入り児童書専門の図書館として変貌を遂げます。(詳細はHP参照をhttp://www.kodomo.go.jp/)
近隣には東京藝大、黒田記念館、国立科学博物館、旧東京音楽学校奏楽堂など、ここは日本かしらん?と見紛うやうなクラシック建築が密集しておりまして、まるで、ヨーロッパの名だたる美術館や宮殿のやうな佇まいに、この日ここで数時間を過ごすのかと思うと、入口を前にして胸の高鳴りが抑えられません。可愛らしい柄の半襟の少女、レースの日傘を持った洋装のお嬢さん、学生帽と下駄の学生、どこか冴えない袴姿の文士くずれなどなど、NHK連続テレビ小説さながらなクラシックな情景が目に浮かぶやうです。
まるで宮殿のやうと比喩しましたのは、それなりに高い建物だからでして、館内に置いてある説明書を手に取りますと3階までの作りとなっております。なるほど、どうりで天井が吹き抜けて高い訳です。天井の高さを生かし、弓形に石を積み上げたアーチや同じく弓形のクラシックな窓枠、鉄をまるで編んだり、絡めたりしたやうな、そこに出来る隙間の模様が美しい手摺と螺旋階段…etc、その都度、補修され、保存を勤め、時を経たであろう美しい装いに、ただただ、溜息が漏れるばかりで、日本人特有の丁寧さと清潔感を併せ持つ館内に心うたれ、肝心の子どもの本の部屋へなかなか入ることが出来ませんでした。もし時間が許されるのなら微かな光の入る館内で日がな一日大好きな本が読みたい。それなら建物の装いに合わせて白のレースのブラウスにペンシルスカート、夏らしくストロー素材のヘッドピースで50年代風に仕立てるとか、それともヴィンテージのお気に入りのレーヨンワンピースかしらん?とつい夢見心地になりますが、子育てする身です。ここは雰囲気のみを味わいませう。
こどもの本の部屋は、エントランスや通路の開放感とは違いひっそりとして、余計なものが無く、心地良い明るさの、落ち着いた照明で部屋の中が包まれております。こういう空間でなら夏休みの子供たちもじっくりと本に向き合えるのだろうし、クラックな趣の中に身を任せて読書をすれば、叙情も備わりそうです。
ここに全てを記しますと長くなってしまいますので、私が良いと思った所を散りばめたいと思います。後は、興味を持たれた方が、足をお運びになって実感して頂ければよろしいかと。
3階にはミュージアムやふれあいコーナー、休憩スペースなどが御座いまして、その作りはさらに天井の空間を生かしたものになっております。途中、息子がぐずってしまったのですが、この広い空間で抱っこをし、あやすと息子も落ち着くやうで、安らかに眠りに落ちていきました。
左の扉を開くとミュージアムへと続きます。取っ手に”おす登あく”(押すと開く)とプレートがありまして、手で押して開く扉がまだ少なかった時代のことで、このやうに説明が添えられているそうです。右の扉を開くと途中、パーティーでも開けそうな、広々とした贅沢な踊り場を抜けて外へ続きます。真夏の、思わず目を細めるやうな強い日差しの中、目に飛び込んできたのは豪奢で立派なメダリオンでした。
他の洋風建築と違い図書館ですので出入りは自由ですから、気の赴くままに息子を連れてあげられたらと。美しい佇まいに大人も見とれ酔いしれますので、忙しい日常への気晴らしになります。
帰りは言問通りを渡り、谷中霊園の手前の三崎坂を下り千駄木へ。へび道の辺りで路地散策をしていたら、可愛らしいお店を発見。こういう、グリーンをさり気なく使ったブロカントな演出に目がありません。あいにくこの日はお休みで、次に行く楽しみがまた一つ増えました。






































